「 紅茶神の微睡む、 」/
PULL.
封を切った宇宙からは、
懐かしい薫りがしました。
お久しぶりです。
と、
挨拶をして、
あなたを二匙。
ゆっくり沸かし、
ふんわり注ぎます。
硝子の向こう、
ふるくる舞い踊り。
やがてあなたは、
しずか底に沈みます。
夏窓からは、
いつの日かの波音。
机には、
雨からの絵葉書。
紅茶神の微睡む、
ひとしずくの午後。
琥珀の彼方に、
月が浮かんでいます。
了。
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