もう食べれない ぷらとにっく /七尾きよし
 
のようなもの
一時だけ風邪をひいたみたいなものだという意味で熱にたとえられ
身体を揺り動かすほど心を乱れさせる圧倒的な熱量を持った感情
という意味でも恋は熱のようなものとたとえられる
「不可抗力」という言葉がふさわしいと思う

だが、ある時点からぼくの恋は計画的なものへと変貌する
熱にうかされとまどう青年は
熱を得るために恋をする中年へと姿を変える
どこをどう叩いても熱き血潮など湧き出ることはない
確信を持ってそう言う中年男は計画的恋の実行犯
身体の熱を保つために、身体を暖めるために
人生の冬の時代が来る前に人は恋で暖をとる
十分すぎるほどしらけた恋は、ぬるま湯のようで
いつまでたっても温まらないよと中年男は愚痴を言う



もう食べれない
満腹感の中で
身をくねらせ
吐きだされる息のなか満たされる
ぷらとにっく
古時計がぼんぼん鳴らす
うす暗がり
オレンジ色に肌を染めるきみ
長細い瞳の目じりが揺れ
肉欲は食欲のかなたへ
もう食べれない
ぷらとにっく


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