海?夏の匂い/前田ふむふむ
 
れる。
その浮遊する水源から、眩しいみずの闇はひろがり、
余白のない夏に浮び上がる。

湿った静寂を曳いたみずおと――
起き上がる色彩の十字路――

白いパラソルが風に孕んで、
色をささえる海は、いくえにも、
硬く青さをむすんでいる。
即興を刻んだ波の音階は、怠けることなく、
わたしの鼓動の高まりに共鳴している。

胸元を開いた空が歌う――
燦燦と高音を弾く、
眼を溶かす日差しは、速度を落して、
わたしの焼けた素肌のなかで、
深く沈んで息づく。

眩暈とともに訪れる、脱いでゆく、――夏の匂い
あなたの白い足で、引いてゆく波が砕ける、
ぬれた浜辺に、夏の潔さが見えて。
振り向くあなたは、真夏のふところに抱かれている、
爽やかな風を携えて。


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