夢の架け橋/明日殻笑子
 
水銀が染みでて狭い空のせいで
ここは今にも崩れおちそうなのですが
きれいに舗装された道の真ん中に
ま白いチョークで丸を描く

チョークの白い粉は毒であるから
すぐに洗いながしなさいと教わりましたが
毒であると知って使わせていたのは
あなたなりの躾(しつけ)なのでしょうか

敷きつめられた十八の丸は
濃くてあつい紺によく映えて
お隣りのお隣りまでも足早に通りすぎて
十何往復の間に陽が暮れていて
うすい出汁(だし)の匂いと母が
二秒遅れで私を呼ぶ声をあげて
排気のとどかぬ路地では素直でいられました
ずっと夜のまま明けないなんてことが
あることを知らなかった
あの頃


きれいに舗装された道の真ん中に
ま白いチョークで描くは夢
夢であったのです
架け橋であったのです
知らぬ間に太陽が昇って
またも水銀立ちこめる空にむかうための


けん


けん









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