バスに揺られて/松本 卓也
のはずだったのに
気が付けば山の中まで入ってて
アナウンスが終着点を告げていた
現在時刻は十三時
戻りのバスは十七時
海を見下ろす山の中
空も海も嫌になるほど青くって
雲が作った一瞬の影を
追いかけて歩き出そう
今日何をしたかったかなんて
今はもう些細な問題だから
気が付けば既定路線から外れて
気が付けば人の流れさえ無視して
流れるままに我を張っている内に
いつも目的地を失ってきた
些細な一日が今日も過ぎる
方向さえ知らない山道を下りながら
風景を眺める余裕があるから
愚痴りたい訳じゃいのだけど
ただ少しだけ思い知ったのは
行き方にしても生き方にしても
途中下車しても良い時が
きっとあるんだろうから
躊躇いも慎重さの裏返し
景色を愛でる余裕も大切
そうやって失った時間が
今日も額を落ちていく
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