村の温泉/渦巻二三五
ふとどきな大き乳房に出会ひけり丘の上なる村の温泉
湯の中に溶けるがごとく身を沈め女は白き乳房浮かべり
乾きたる身は清めらるおほどかに腿(もも)を洗ひしひとに並びて
二の腕の痣(あざ)高々と洗ひ髪束ねしヴィナス立ちて湯に行く
形よき乳房などとはどのやうな形のことかわからなくなり
石鹸を拾ひしひとの陰(ほと)見えて大きなる尻たくましきかな
ほくろなき白き背中を羨(とも)しみて肩までつかり見とれてをりぬ
おそるおそる湯に入り来る幼子の母が与へしおちんちんは無垢
早春の山仰ぎゐる岩の上の白きをとめの胡座姿よ
男とふものと生きをる現世(うつしよ)にもどりて夫(つま)と牛乳を飲む
湯の中で言葉交はししひとと会ふ現世(うつしよ)にてはすれ違ふのみ
同じ湯にあそびしわれら服を着て名を呼ばれれば人にまぎれる
臍(へそ)といふ一生(ひとよ)の傷をひとつずつ持ちて集へり村の温泉
戻る 編 削 Point(3)