青色の血/明日殻笑子
 
先生 にんげんとは
さびしい、本当にさびしい生き物だと私はきいたのです
世界にはパンのひとかけらや真水のひとしずくを
ひびわれた皿のような目をして待っているうちに
そのパンやその水の代償になってしまう人がいて
ネジ巻きのブリキほどに感情を欠落させながら
彩度が違うだけの真っ赤な泡沫(うたかた)で
体や神経を洗う人がいて
何もかも無くしてしまった焼け野が原で
かけらだけ残った心を齧って暮らす人がいる


だけどじっと目をこらした地平線の向こうでは
しかめ面でひとくちかじったバーガーを踏みつけては
甘黒くなるまで砂糖をいれて水を飲む
ていねいに種をまいて育てた摩天楼
[次のページ]
戻る   Point(8)