めかしこむジョニーとめかしこまないデップのあいだ/カンチェルスキス
だったことに惹かれたんだ。多毛の動かないこけしだった場合、おれはちょっと。もちろん、薄毛のこけしだった場合も、ちょっと。薄幸の動かないこけしだった場合、逆に、それはそれでおいしいなあ。
花沢さんは視線を交わすだけでおれが何を欲してるかわかってくれて、何と言うか、おれはいくら視線を交わしても、こいつが欲しがってるのは天津甘栗か25mプールぐらいだろうとしか思わなかった。
「チョモランマの頂上に登るためには何が必要?」
とある日花沢さんが突然訊いてくるから
「手すり付きの階段と、あとは」おれは答えた。「踊り場」
いつもは瞬間に切り返してくるのに、花沢さんはそんときだけは
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