気づき/
中村猫彦
夕暮れ、
遠いほうから、
なつかしい風と、
鈴の音が聞こえた
まずは左手をかけ、
それから右手をかけ、
首の根元を、
きつくしぼり、
左手がほどけ、
右手がほどけ、
首の根元がやわらかくとけて
夜明け前で、
ある
アメリカのミニマリズム作家の小説の主人公のように、
私は
目を覚まして、起きて、外の
玄関の外の
門に出ていって
そこに
ひどくうらぶれた私が
固いコンクリの上に
立っていた
彼が
何か言いたげに
口を閉ざした
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