パサヤ・ドニバネには道が一本きりしかない/水在らあらあ
弁当食べにいつもの堤防まで 歩く ボリーと
村中が しけってるぜ なあ ボリー お前も 元気ないじゃないか
いつもの魚屋の角っこにも、おしっこしないじゃないか…。 ほら ボリー、
走ろう、ほらっ、行くよ、ボリー…。
今日は一緒に食おうな、おれの弁当、ひよこ豆とチョリソ煮込んだのだから、
チョリソは、全部やるよ…。
―よお。
―やあ。
イナ、イナシオ。この村の便利屋だ。なんて面だ。なんか噛み潰したみたいだ。
こめかみの傷跡が泣いてるみたいだ。
ああ、マヌエルだ。霧雨全部吸い込みながら来るのはあれは
マヌエル。もう退職寸前の漁師、こんな日でも葉巻は咥えているん
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