コルシカ島のブタ/ブルース瀬戸内
昔、市場に連れていかれました。
小さなブタはその様子を
小さな目で見ていました。
小さなブタの両親は
軽トラックに載せられて
石の群れの先に消えていきました。
小さなブタは
石の群れが両親を隠していると
本気で思っています。
私はブタの鼻の穴を片方だけおさえたり
両耳をパタっと閉じたりして
ブタを怒らせてしまうこともありますが
なにしろかわいくてしかたがありません。
このブタはずっと私のそばにいてほしいです。
ブタもそう思っているといいのですが
なにしろ両親に会いたくて会いたくて
仕方がないのかもしれません。
小さなブタが
前足を少しだけ上げて
思い切り鳴きます。
前足を少しだけ上げて
闘争本能をむきだしにして
それでもかわいらしいくせに
思い切り鳴きます。
自分では「咆哮」のつもりです。
ナポレオン気取りです。
「咆哮」の後は
必ず私のところに戻ってきて
私の足で鼻をキュッキュッと拭くと
10秒後には目を線にして
眠り始めます。
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