沈黙する正午/前田ふむふむ
れて、
瞼をふかく閉ざせば、
蝉時雨が、過去の速度を覆い、
新しく燦燦と積もる暦に、
いつまでも、祖父の思想をくゆらせている。
沈黙する正午、――
余韻を頬張るかなしみの鐘、――
若い微風が汗ばんだ頬を撫でる。
駆け昇る先人の眼差しは束ねられて、
ひとつの古い記憶に宛がわれる。
立ち止まる時間の端で
ひそかにため息をつく数羽の鳩が、
辿り着けない涙の荒野を抱えて、
白骨の鎮まる茫々とした暗闇の空のふもとに、
白い香火を引き摺ってゆく。
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