沈黙する正午/前田ふむふむ
打ち震える涙が、立ちならぶ
忘れられた街景の片隅に、十代の足音を揺らして、
失われた向日葵は、いまだ声を上げて、
古い風の臭いに浸り、
枯れた夏を首に巻いて、
届かない空の裂け目を編んでいる。
八月の空は、うつむき、かなしい汗を投げかける。
燃え落ちた真昼の神話は、二度と帰らず、
枯草色の袖口に、子供の眼がしらが横切る。
そそり立つ岸の上の壁に、
硬くはりだされた夥しい赤い履歴は、
凍るひかりを享けながら
透ける海の濃度に、
老いた天蓋をうすく染めこんで、
太陽の夢の柩を遠くに沈めてゆく。
鎮魂の窓に映りこんで、囁きかける、
木々の形骸に見つめられて
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