ノート(河口輝)/木立 悟
土に消える冬の後ろに
秋がひとり座っている
秋は川を呼ぶ
秋は 海鳥を呼ぶ
濡れた道に飛ぶ鳥を
声は薄く追い抜いてゆく
傾いだ空のむこうへ むこうへ
雪から目覚めた火は集う
曇が眠りのかたちを描き
鎮むものは再び鎮む
川と海が出会う音
風に翼が混じる音
流木を持つ手を火にかざす
飛び交うものが鉛に映える
午後は明るく粗く凪いでいる
雪のつぶやきが舞いあがり
集う火のはざまに満ちてゆく
秋から生まれる春のまなざし
秋の手をとる春のまなざし
涸れることのない水のまなざし
声を持つ手を火にかざす
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