「おトイレで、まってます」/加藤泰清
ひどく蒸し暑い日
公衆便所の一部屋の中
脱水症状寸前の私の
顔から
胸から背中から
おしりから穴から
垂れながれた汗は
めったに日を浴びることもない
私の真っ白な肢体をつたって
せいいっぱいの私のオシャレ服たちに
汚らしく染みこんでいく
(ちなみにこの靴は一万五千円だった)
そして金隠しの上に両足を置き
両手をいっぱいにひろげ壁に押しあて
水分が蒸発し
餅のような粘り気をもった糞から発せられる
気が狂いそうになる臭気を
力いっぱいに受け止める私を
優しく微笑むように支える
その姿は端からみれば
さながらイエス・キリストのようにみえるだろう
(ただし歯を食い
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