いつも座られる夢を見ている/nm6
らはどうしてか、旅をつづけているように振舞っている。
自転車のサドルが連想しているのは、決してゲームのようなものではない。けれど駆け引きの多い男女の、とにかくそれは服だったり下着だったりのそれなのだけど、面白くないことなんてない、と、言い切ってしまう色目使いの彼が一番色気がないので、せめて僕らだけは風向きに敏感に、その午後を過ごしていなければいけないと思う。過ぎていく午後を、たとえば今、この瞬間を過去といってしまうのは簡単だけれど、それはただのありふれたレトリックにすぎない、と、例えばそういう些細なことに気づかないまま彼は自転車に乗ってこの世から去ってしまうので、老いた馴れ合いが去っ
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