いつも座られる夢を見ている/nm6
自転車のサドルってやつは、大抵ピッタリしているものだけれど、一瞬どこだか忘れてしまうその名前はさておき、色はタンカーから流れ出す按配の、石油的な黒だ。とにかく座る場所なんだけれど、それがそいつはどうもおかしかった、そのすれ違いざま、ほんの2秒のサドルは、スーパーの前に停めてあった自転車の、その色も忘れてしまったが、とにかく停めてあったのだから引き返せばいいのだけど、刹那的であることに拘ってもいなかったのだけど、とにかく2秒しか存在しないそいつは、そのピッタリしているはずの部分が少しよれていて、なんとまあ、そのしわ部分が妙にエロスな午後2時だった。
忘れ果てるための技術を。
ぼくらは
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