風鈴/かや
風なんか
これっぽっちも吹いちゃいねえのに
鳴るんだよ
軒下によ
無理矢理引っ掛けて傾いた
風鈴が
ちりいんちりん となあ
おれは晩飯も早々に
枕につっ伏して
煎餅布団握り締めた
扇風機がガラガラ
湿っぽい熱気かき混ぜた
顔を上げなかったのはそりゃ
泣き声聞かせらんねえもの
情けねえが男の意地よ
ああ 情けねえ
おれいやんなったよ
なんもかもいやんなった
おれがうっと呻くたび
ちいりんちりん 鳴りやがる
涙ぼろぼろ
止まんなくなった
やり切れねえよ
気付いてくれっていうんだ
窓の外から
おれと同じ声でよお
風なんか
これっぽっちも吹いちゃいねえのに
鳴るんだよ
軒下によ
無理矢理引っ掛けて傾いた
風鈴が
ちりいんちりん となあ
おれいやんなった
いやんなった
叩きつけても銅のあいつ
割れねえで転がるんだろ
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