群青の境界/松本 卓也
 
天窓に響く雨の歌が
唐突に激しい叫びに変わり
秒針が半周も回らない内に
また静かな声に変わった

空の激情を表現した雲が
宵闇に何を描いたか知りたくて
僕は窓にへばりつき
目を凝らして遠くを眺める

雨雲の隙間に微かな光が
刹那に見え隠れしては
柔らかな手を延ばしたり
引っ込めたりしているようで

流星ですらない小さな輝きを
もう一度目にする事が出来たなら
明日の幸運を祈ったりしてみようか
たいしてロマンチストでもないけれど

少しだけ重くなった瞼を擦って
ささやかな偶然を待ちわびる
何の縁起になるかなんて分からんけど
心地よい夢を見るきっかけになれば

雨雲が描く群青の模様から
少しずつ境界が曖昧になっていく
信じられる未来を下さいと呟いて
ただじっと闇に目を凝らしていた
戻る   Point(2)