環状線/霜天
乗り過ごしの君を乗せて都会の
寒いばかりのドアは行き過ぎる
ざらついた坂の向こうで、夏は
君の声を真似て、笑う
誰のものになるか、晴れ向日葵
種を植えたのはふたり、以上で
なりそこないの言葉だけ応えて
今日もいつかとすれ違い
母の、切れた夢の約束は
いつの間に破られた、のか
後ろ姿
後ろ姿に
撫でる指もなく
凍える冬も、なく
回り続ける骨組みのレールに君は
何を想い見つめるか、格子の空
せめて崩れませんようにと、指組合せ
余所行きの「お帰り」で
外れた誓いを繋げる、声
ここには一杯の涙、それだけの
支え続ける都会の空は
心止めることもなく
迷いもただ回るだけで
いつかは帰る君のこと、だから
高く広い格子の空に
待ち続ける夏、だけど
約束はいつ破られたのか
見上げたくて手を振り返す
後ろ姿は、母の
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