夜のうた/八布
 
手に入らないものしか欲しくない

ガラス窓を開いて 

星を数えると指が濡れた



絹のシーツの上で

秘密の言葉を口移し

夜の一番深い時間に

初めての声色を使う

爪に入った小さなヒビも

今はもう気にならない

親指の付け根を軽く噛む

空気の冷たい匂いがする


こんなに月が青い夜は

静脈も透ける

何かが確かに朽ちていく




今夜はうまく眠れない


心臓の音が大きすぎるせいだ
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