べにさし/Rin K
 
   障子のむこうでは
   雨の簾が揺れています

   重なり合う影を
   私の分だけ
   一枚引き剥がして
   あなたの流れに
   耳をすませ
   聞き取りたいのです
   心のほかに
   触れて欲しいところ

     瞼から頬へ
        頤から項へ

   みかさを増した川を
   まだ青い楓が流れるように
 
   吹き消した行灯の名残か
   あなたの白い肌は
   少しずつあかく染まる

   あなたの唇の間で
   うつろに動いている
   この指を
   紅差しと覚えさせたのは
   あのひとでした
   抜け殻のように
   はらはらと形をなくした
                夏に

   雨音が乱しますが
   聞き取ってくれますか
   私の流れも
   心のここに
   触れてください
         紅差し指


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