森の浪漫/前田ふむふむ
細い肩を素直におろして、
添削された過去を回想する。
湿潤で、やさしい微動を蓄えた眼差しを、
斜めに伏せて、
ひとたび、福音を味わいながら、
時のつづきは、走り出す。――、
満ち足りた森は、輝きの扉を踏み出そうと、
赤い汗が高まり、つま先を強めて、
あなたを、祭壇の前に敷かれた布にいざなう。
白いいのちは、さらに白い衣装を高貴に
染め上げて、
あなたのみずいろの肌のなかに溶けていく。
速度を持たない時間が、夏の草々を、
静かに踏みしめて、
森の浪漫は、ふかく昂ぶる夢を、
みどりの胸に包み込む。
森が祈りをあげる祝福のときに。
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