森の浪漫/前田ふむふむ
戯れる森の雫が、
ひとびとの拍手のなかで、静かに横たわる。
あなたの流れる姿が、
森の節目に、厳かに薫り立つ。
標高をあげている森は、
巧みに感度を敷きつめて、
わずかに彩色を動かしながら、
方位をなめらかに、下流に滑りだす。
森を固める青い循環は、
とどまる思想を持たず、流れつづけて、
繰り返し空の裾野を塗り替えてゆく。
囀る鳥は、ひときわ、喉をあたためて
点々と束ねられた樹木の奥行きを、
広げつづける、
青々とした音階の厚みを増して。
小さく隆起する風を掻き上げる、
弦楽四重奏の喜びを、簡素な教会の窓に、
涼しく馴染ませて、
あなたは、眩しい細い
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