戦慄と地球/古河 セリ
 
あたたかい子宮の忘却(兵士たちの白目)、
膿んだ地の、下の、徹っていった水、その痕
育った果実の潰れる、幻聴鳴り渡るのは怖いものだ
若葉の匂いたつ木立、なぎたおすどくろの群れ
命知らずな小鳥、青い船、戦の泥地、
満月を横切る兎になって、
度々、撃つ
盲目の恐ろしく長いトンネルとは
呼吸する子らの、心の荒野に兵士の剥いた目玉、
もはや、居座った爆撃機
枯れ葉踏み鳴らす赤い鳥、
心枯らす猛暑のうねり、
砂丘を創る太古の風から人工建築物を創る夥しい手まで
臓腑に滴る暗澹たる決意、
かの尊き象徴の形而上に雲隠れ、
虚構的有機物に成り下がり、蟻の行列すら腹の底を通過させる
ああ、
けれど、
未熟な生き物の器、脆弱に歩むもの、
受け止めよ、
心の底の綱の永遠とも思える連鎖を
かつて豊沃の大地を夢にあげた心のゆとりを
私は
暁の透明な露に現在を見る
兵士らよ、
眠ればいいさ。
長いトンネルよ、
白い蛇を飼えばいいさ。
黒い銃から白い花まで、
この世界を埋め尽くせばいいさ。

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