書かれた-叔母/音阿弥花三郎
 
耳の後ろが赤く膨れ上がり
朝焼けのように拡がり
蕁麻疹が広がる
意味の分からない恐怖をかんじる
湿地帯の高い草の中で
白い水鳥の環視の中で
叔母は叫び声をあげる
意味の分からない恐怖をかんじる
蕁麻疹が広がる
朝焼けのように拡がり
耳の後ろが赤く膨れ上がり
  


風上の叔母のうちの匂い。
だから町は
どこも叔母のうちの匂いがするのだ。
こどもは気に入った玩具を抱えたまま
密かにその匂いを味わった。
食器棚の匂い
血の匂い
花の匂い
どこにも咲かない花の匂いだ。

こどもは背後に立っている叔母に気づいた。
叔母の化粧台を覗いていたのだ。

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