椅子/松本 卓也
 
相変わらず軋んだ声を上げて
いずれまた折れるのだから

取り替えてしまえば良い
でもまだ使えるはずだ
意味のない愛着に縛られて
決断を先送りしていく度に

取り返しがつかないほど
ボロボロになった背もたれに
存在を委ねようとして
傷ついていったはずなのに

こんな些細な事でも
過ちを繰り返しているのが
身に染みるほど分かっているのに
繰り返してしまうしかなくて

僕の重さに耐えられる椅子は
探せば見つかるだろうけど
僕の心に耐えられる人は
探せば見つかるのかな

戻る   Point(2)