夏の子/八布
 
無人の教室の窓際の席の

机に腰掛けて 足を投げ出している

君は夏の子 

白い横顔


幼い頃の誰かに似て

生まれる前の恋人に似て

小さな爪跡を僕に残す

君は夏の子

爪を噛みながら


泳ぎ疲れた後でたゆたう

微睡みのような

おぼろげな輪郭が

網膜に張り付いた


微笑みの引力で 

何もかもをたぐり寄せ

レモンの似合う指で 

整った図形を掻き乱す

君は夏の子

中指には届くけれども

人差し指には届かない
 
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