地球投げ/下門鮎子
土星をめぐる氷に乗って
電車の中吊り見るように
星々を眺める
あの青いのが地球だね
とあなたが指さした
氷の中に一匹の虫
琥珀に囚われたよう
土星に住んでたの
なぜここにいるの
わたしたちを待ってたの
氷の中の虫、
どんな生を送ったの?
あなたは相変わらず星の光を
目に耳に楽しんで
小さな息子に
金平糖でもつまむみたいに
口の中に入れてやっている
わたしたちは
家族
地球に目をやって
いつかの海老の言葉を思い出す
(地球投げなんてスケールの大きい荒事やってみたいね)
そろそろ戻ろう
ここは寒いし
いま投げられたら
置いてきぼりになる
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