再生の詩/草野大悟
 

記憶を止めておくことも
普通に食べることも
喋ることも
何かを握ることも
絵を描くことも
手紙を書くことも
料理を作ることも
刺繍をすることも
化粧することも
トイレに行くことも
痒いところをかくことも
本を読むことも
眸を抱くことも
買い物に出かけることも
できない

毎日毎日
リハビリを続け
ささやくような小さな声さえ出ない位疲れ果て
それでも
車椅子に乗って眠りに耐え
看護婦がスプーンで差し出す食事を食べている
一日でも早く
家に帰りたい
その一心から
大きな声で笑いたい
その一心から
祈るように食べる嚥下訓練食
やっと食べれるようになった嚥下訓練食

起きる
食べる
リハビリ
休憩
食べる
リハビリ
休憩
リハビリ
食べる
寝る

この半年
気の遠くなる
痛い毎日の
繰り返しに耐え
時折
あの日のように
鮮やかに微笑んでみせる

輝け
笑え
そして
歩け
ぼくらの太陽よ、未来よ




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