アンテナ技師の娘/藤原有絵
父は昔から
美しい曲線の虜で
現代において
正しく電波を飛ばす事に貢献している
パラボラアンテナの白を
見て大きくなった私は
電波はアンテナの大きさに
比例すると信じている
言葉なんて
頭を使って飛ばすものではない
そういったのは兄で
小さな携帯電話を愛用している
たくさんのアンテナに囲まれて
闇色の濃い夜に眠るのがわりと好き
空気中の水蒸気に乱反射して
電波は音楽を奏でる
それを聴くのは好き
内容なんてロマンチックでなくていい
ただの情報ばかり
電波交錯
星のまにまに
たくさん屈折しても
奇麗な着信音で届くのですって
おかしな話だと
恋人に話すと
彼はいつも
長い指で
私が眠るまで
髪を撫でてくれる
母は電波が届かないくらい遠くにいて
もう会う事が無いけれど
大きなパラボラアンテナを
たくさん
たくさん
集めたら
もしかして
も
あるかもしれない
と 信じている
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