或る蟻の葬列/
朽木 裕
蟻の葬列は終わったようで
最早、狭いままの視界の隅を文字達がぞろり、ぞろりと歩み去っていった。
白い紙の中央に死んだ蟻を残して文字達はどんどん去っていく。
顔。
死に顔。
刻限はもう午前様で会議はいまだに終わらない。
死んだ文字の一つも居なくなった真白な紙の中央に
ただ残された蟻を見遣る。
これは蟻なのかそうでないのか、
私は死体なのかそうでないのか、
最早、何一つとして分かる事はない。
息をゆるく吐いた。
蟻が少し、動いた。
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