或る蟻の葬列/朽木 裕
 
一日、眼鏡をせずに過ごすとぼんやりした視界に慣れてしまうので困る。
会議中、手元の書類文字が動いたと思ったら蟻だった。


(どうしてお前、こんな処に居るのだい?)


無慈悲な左指は動く文字を葬ってから動かない文字列を辿る。


(…この者らもある種、死んでいるのだが、)


目に痛い程、白い紙に磔にされた文字達。
ゆっくりと文字を辿る。



清冽な並びの文字は安らかな死体。

綺麗に一列、並ぶ。



箇条書きにされた文字は火にくべられるのを待つ死体。

磔の紙の底へ深く沈む。



点在する文字はバラバラ死体。

文字が多けれ
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