入道雲/椎名乃逢
 
山の向こうで漲る夏が破裂した
立ち込める白煙が遮ってしまうのか
爆音は僕の所まで届かない
気象庁の弱々しい宣言でそれが訪れたことを知っても
半信半疑なのは音が聞こえないからか
きっと弾ける前のポップコーンの中というのはこうなのではないのかと
ぐにゃりと曲がるチョコレートもまた音を立てない六畳間
うねる空気はそれらの音を吸い込むんだ
夏は音さえも食い散らして
ある日突然耳をつんざくように僕の目の前に現れる

弱々しいのは、ラジオの声だけなのだろうか

知らずと握り締めた空蝉の破片が
爆風に吹かれ舞い上がりキラっと 光った
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