停滞のリズム/カンチェルスキス
 
をそれぞれすり抜けていった。それから前を向いたまま、お互いの自転車の距離を縮め、手元を見なくてもどこに相手の手があるのかお互いわかっていた、手をつないだ。まるで生まれる前から決められてた一つの法則のように。
 一年前と何も変わらなかった。
 二人は手をつないだまま一年過ごし、その間、おれは何というか、まるで生きた心地がしなかった。どうにかなるだろうと漠然と考えてたものがすべて幻想に過ぎないことを知った。知ったところでどうなるもんでもなかったし、こうなった多くはおれ自身が原因だった。それにおれはとっくに何かを考えるのをやめていたのだ。
 二人は手をつないだまま、小さくなっていった。タバコの自動販売機の前を通り過ぎ、次のガソリンスタンドのある交差点を越えると、二人の姿はほとんど見えなくなった。
 和風ファミリーレストランの客たちは笑っていた。苦い気持ちを日々引きずりながら一瞬見せる安堵の表情だった。
 こんなとき渦巻く衝動は全部自分に向かってくる。
 少なくとも部屋まではそれが続き、おれは笑うしかなかった。


 


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