停滞のリズム/カンチェルスキス
横断歩道を渡ると、和風ファミリーレストランがあった。おれはいつも店の前を素通りするだけだった。いろんなことをしゃべりながら飯を食ってるやつらがいた。笑ったり、無表情で相手の話に頷くだけだったり。おれがそこにいて笑うことはなかった。笑ったりすることができるかどうかもわからなかった。
おれはその頃ほとんど誰ともしゃべらなかった。しゃべらない理由は簡単だった。誰ともしゃべりたくなかったからだ。生活に必要な金だけ稼ぐと部屋にとじこもるか、外をほっつき歩くような毎日を送ってた。転々とした仕事場ではいつも変わり者扱いされた。仕事のこと以外には何もしゃべらなかったからだ。パチンコも競馬も興味な
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