転校生/光冨郁也
 
ボールを投げつづけた。
白いボールが、音をたてて、
転がり、グローブに収まる。
近づいてくる、
アキラとリョウの、
三人で空気銃をもって、
林にでかけ、
駆けまわりながら、
夕方までうちあう。

雪の残る林の中、
三人で、貯水池に行き、
空に向け、ひきがねをひく。

リョウの父が亡くなり、
制服のまま、
通夜にアキラとでかけた。
顔もよく見えない夜、
引越をしていったリョウの、
言葉は暗がりに消えていく。

わたしは、白いネクタイをして、
何年もあっていなかった、
旧友の、
披露宴にでかけていた。
ビールを、つぎにくる、
友人の知り合いに、
愛想笑いを浮かべ、
少ない言葉を交わしながら、
席にだされた、料理を、口に運び、
新郎に拍手した。

わたしは、心の中で、
壁に向かって、
ボールを投げる。




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