やもりの首/三州生桑
、ニッチもサッチも行かなくなってしまった。もう手も足も尻尾も、ピクリとも動かせない。
この状況は限りなく悲惨だけれど、俺は辺りをキョロキョロと見回しながら、少し笑ってしまった。
仏間の白壁から、やもりの首が生えてるなんて!
かうなったからには腹をくくるしかない。
天寿を全うしようが、ミミヅクに食はれようが、飢ゑ死にしようが、死ぬことには変はりない。道理ってもんだ。
おや、いつの間にか、男の子が俺を見上げてゐる。可愛い子だな。まだ十歳ぐらゐか知ら。
キラキラとした、好奇心に満ちた目で、じっと俺を見詰めてゐる。
おい、坊主。蚊でも蝿でも何でもいいから、虫を捕まへて来てくれよ。
最後
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