無題(海岸で波は私に届かない)/
たりぽん(大理 奔)
砕けた石英の剃刀を
突然の風が巻き上げて
私の頬をかすめる
誰に届くわけでもないから
名前まじりのため息は
手のひらで温かい
癖毛のように渦巻く黒雲からの
不安な色の雨粒が
私を正気にさせる
私に届くこともない
懐かしく荒々しい
あの波の一列も
どうして私を傷つける
届かないところから
冷たく尖ったものだけが
だめだ、だめだ
波にむかえ、砂を噛んで
そんなにかんたんに
あきらめてはいけない
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