冷えた麦茶を飲む/美味
 
注がれて激しくうねる麦茶
そこに波打つ氷の熱
呼吸と麦茶が混ざり合い
感覚は針のように鋭く喉を刺す
祖母が死んだときの
飼っている犬が死んだときの
苦味が
体の内側から
徐々に頭へと回っていく
芯から冷めていく

風鈴の穏やかな音色は
夏の暑さをかき消してくれない
そんなことは知っていた
はずだったのに何故
今になってあの懐かしい
チリン
金魚の風鈴が欲しくなったんだろう
夕暮れていくヒグラシの音に
耳の奥から全部持っていかれた
そのせいで

いつになっても
訪れてくれない夜
時計の針がもどかしい
私はじっと麦茶に染まっていく
身体を待っている
氷が解けてなくなる
視線がぼやけている
窓の外には早すぎる月が見える




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