誰も愛していない夜/松本 卓也
 
とも自問に苛まれる夜を
忘れた隙間を突付かれる瞬間に
置いてきた失望達が浮かべていた
遺伝子に書き込まれた笑顔達を
思い出すことができるのなら

今はまだ守るべき温もりもなく
償うべき機会さえ手にしてもない
もしも再び目的に注ぎ込む情熱を
手にする事ができたのならば

夢の合間で歯噛みするボンクラとは
少し違った愛し方ができるよう
今はきっと僕自身の中に
光を蓄えていく時期なのだから

夜の闇に浮かんだ月の明りも
スタンドや民家の灯りも
たまにしか通らない車のライトも

空っぽな胸の中が冷え込んでいても
奥深く誰にも見えない場所で
まだ居ない新しい君に注げるだけの
光だけは失わないように
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