細胞分裂/ネット詩の悪魔
かつては電話一本で事は済んだ
君の分厚いメモ帳には
大切な電話番号がぎっしりとつまっていた
古きよき時代の御伽噺だ
現在ではもう少しだけことは複雑だ
まず人間が多すぎる
誰かが誰かを
その誰かがまた誰かをドアの内側に引きずり込み
テーブルの上で握手が交わされ
モノクロの名刺が蛾のように飛び交い
時にはグラスが交わされ
時にはすっかり薄くなった頭が床に擦り付けられる
そしてリスト
一つまた一つと項目が追加され
その意味を知っている者は誰もいない
ページ数はプルースト並に膨れ上がり
律儀に最後まで読み通すのは
もはや君ぐらいなものだ
君は時々わからなくな
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