夕凪ぐ、から。/夕凪ここあ
 
ずっと遠くの方を、
水平線が見たかったのに
空との区切りがよくわからない
から

少しだけ背中を丸めた
薄い水色のワンピースから
覗く白い腕が
夏には似合わない
から

ただ黙って座り込んだまま動かない少女

各駅停車しかないような
電車に乗り込み
先ほど降りた駅の名前はとっくに忘れた
車もまばらな道路を
ただ海の方角に向かって歩いてきた

海の見えない場所から来た少女は
潮風のせいで白い肌に張り付いたまま剥がれない
夏を嫌がる
サンダルを脱げば砂の心地悪さなど
感じなくて済むのに
海の見えない場所から来たせいで
気づかない

もう辿りついたは
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