6月の雨にぬれて/ken
梅雨曇りの朝 あなたはひとり
バスストップで高校行きのバスを待っていた
制服の後姿は 泣いているようだった
僕は「ふりかえってくれ」と心の中でねがっていた
その日はとうとう後姿のままだった
雨の降っている朝 あなたは友人とふたり
話をしている横顔は 白いカサブランカの花のようだった
うつむきかげんに笑うのはなぜ
僕は「もっと笑ってくれ」と心の中でつぶやいていた
その日はとうとう横顔のままだった
梅雨晴れの朝 あなたがいた
バスストップで僕と二人きりだった
僕が近寄るとあなたはふりむいて笑いかけてくれた
僕は「あなたがすきです」と心の中で叫んでいた
その日はとうとう何も話せなかった
あなたの名は 白い貴婦人「アナベル」
6月の雨にうたれてよみがえる
その気高くも哀しい後姿
もう一度あなたに会いたい
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