片平と船越のあいだ/カンチェルスキス
 
気に言った。
「これ、いくらすんのかな?」
 売れない男子学生がパッとしない宴会でも使わないような小道具だ。それをかぶっても何に見えるのかおれには判断がつかない。
「100円に決まってるじゃないの」
 あいつはビシャッときた。ほとんどおれの声とかぶってたんじゃないかと思う。これが卓球だったら、こっちがサーブする前に球が跳ね返ってきたようなものだった。
「ああ、そうか。100円ショップだもんな」
 おれは手に取ったちょんまげカツラを吊るしてあるところに戻した。
 あいつはまだ自分の胸に巨乳おっぱいを当ててた。「大きくなーれ、大きくなーれ」巨乳祈願(おれが察するにだぜ)ってやつだ。おれのための巨乳なのにおれなんか眼中にないみたいだった。
 赤い絨毯の存在は完全に忘れていた。おれがどうせ後片付けしなきゃならないんだろう。

(100円ショップで『これ、いくら?』だなんて。こういうところがこの人のかわいいところね)






 <というわけで、山内緋呂子さんとの連散文。




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