返還時代/霜天
 
あの頃の、恋だったのかもしれない

返還しているのだ
次へ、次へと新しい夏を乗り越えるために
足跡を、前へ前へと切り替えていく
いつか思い描いていたよりも
不思議と悲しくはなかった


蝉の声が段々と、遅くなっていく気がする
語り合う夏の中で、僕らは違う街に住んでいる
らしくて
始めた会った親戚の前のように俯いて
黙って並んでいるらしい

それから君がひとつ首をかしげると
もう、そこには何もなくなってしまう
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