くちすい/木立 悟
 



壁の花から落ちた花びら
雀たちがついばんでいる
ふちどりを想う
くちすいを想う


かがやく魔
飛び去る影を見つめるもの
四方を壁に囲まれた
庭という名の底にうたう


雨から雨へとわたる風は
銀のむなしさの手のかたち
胸を抱く羽 金に緑に
触れては消えるものの指さき


花の重さにくちびるを押し
雫と時間に咲く笑みを見る
指を追い すがたなき指を追い
羽の光に散る日々を見る


落ちる花に うたうひとに
火の庭からよみがえる手に
とどかず消えるたくさんのふちどり
たくさんのたくさんのくちすいを想う










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