透明な夜を照らす/むらさき
 
風は無い

私と
あなたのすき間には
いくつもの
透明な夜が並んでいる

わたしはマッチを擦る
あなたに語る言葉を
探すために

わたしとあなたが
共にいた時間を
つなぎ合わせて
一本のロープの上に
置いたとしたならば

それは明け方の光より
長くなるだろうか

私とあなたが
共にいなかった時間に
わたしは
あなたが知らない香りを
放ち

あなたは
わたしに言いそびれた言葉を
一人 駅のホームで
放つ

わたしの指先で
あなたの鼓動が
静かに響くので
その一定のリズムを
置き時計で
数える時

私は
確かに
微笑んでい
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