暗い粘り/atsuchan69
過去が染みる 黒く舗装された路面の 暗い粘りが、今しも
うごめき 波を打ち、群がる人々を蹴散らして 盛り上がる
ビルの高さにまで及ぶ累積した罪の記憶、破天荒な生の挑戦
あるいは無意味な天変地異か 定かではないが、空をめざし
塊りは生き続けた、夏の炎天下にも突風にも 稲妻に撃たれ
一度は粉々に砕かれても、落ちたアイスクリームの 刹那を
記録し、バイク乗りの少年が転んで死んだ、鮮烈な あの色
頭蓋骨から飛び出した、すこし青みがかった灰色のメモリー
酔っ払いが撒き散らした 匂い、犬の死骸、それらを記録し
夜を記録し 真昼を記録し やがて秋が来て 冬、雪が降り
埋もれてゆく世界に 彷徨
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)