過呼吸の部屋/霜天
らしい
ここは地下鉄の三番線ホーム
から、上空遥か高いところ
東西南北、ここからどこへ向かおうと
めぐり逢うことは誰でも出来る
回り、回れば
(そして時々、終われなかった君を思い出しながら)
目を閉じて、ドアノブを回しても
私の部屋には帰れない
不思議なことなんて、どこにもない
私たちが複雑になっていくだけだ
いつか私たちがいた部屋
夏の居残りの数式の、逃げ続けた行方
詰め込みすぎて吐き出せなかった夏は、弾けて
今も、ばらばらに降り積もっている
夕暮れの猫の声、白い青空、眩しくもない
ここに、無数に分かれた君の名を呼んでも
振り返る人も、過ぎていく景色になる
不思議なことなんて、ここにもない
この部屋が複雑になりすぎているだけ
それだけのはずなのに
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